高齢化が進む日本社会では、医療分野から介護業界へ転職する人が増えています。
言語聴覚士もそのうちの一つで、通所型のデイケアセンターで高齢者のリハビリを指導するなど、これまでとは違った働き方も選択肢の一つとなっています。
しかし医療業界と比べて、介護業界は深刻な人手不足に悩まされており、事業所によっては言語聴覚士であっても直接的な介護業務を行わなければならず、転職前のイメージとのギャップに戸惑う方も少なくありません。
そこでこのページでは介護業界で働く言語聴覚士の主な業務内容や、転職後の待遇などについて解説していきたいと思います。
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目次
介護業界で働く言語聴覚士の主な業務内容とは?
介護業界で働く言語聴覚士の主な業務内容は、「話す」ことや「聞く」ことに障害を抱える高齢者の方に、機能回復のためのリハビリテーションを行うことです。
高齢者になると食べ物を飲み込む能力も下がり、嚥下障害を抱える人も増えてきます。
そういった方にも食べることに必要な器官を鍛える運動訓練や、飲み込む動作の反射を高める訓練を指導していくのが主な業務です。
また近年では認知症が原因で生じる言語や記憶の障害にも、言語聴覚士がプログラムを組んで訓練を指導する機会が増えています。
生活の基幹である「話す」「聞く」「食べる」という機能の向上は、利用者のQOL向上を目指す介護業界でも欠かせない要素です。
今後は医療業界から介護業界へと転職する言語聴覚士の数は、どんどん増えていくことが予想されています。
現在は病院で働いているという方も、将来的には介護業界への転職も検討していく必要があるでしょう。
直接的な介護業務は行うの?
介護業界で働くからといって、言語聴覚士が利用者へ直接的な介護業務を行う機会は少ないです。
食事の訓練の一環として食事の補助をすることはありますが、入浴や排せつの介助をすることはないと考えていいでしょう。
もちろん事業所によって振り分けられる業務は異なりますが、言語聴覚士は介護に関する知識も持っていないので、介護業務に関わる機会は少ないです。
ただし通所型のデイケアセンターなどではなく、老人介護施設など利用者が宿泊する施設で勤務する場合、言語聴覚士としての業務以外に、介護士としての仕事も任される可能性もあります。
言語聴覚士の待遇はどうなの?
それでは介護業界で働く言語聴覚士の待遇はどのようなものなのでしょうか。
ここからは介護業界へ転職した言語聴覚士の給与状況や、勤務状況を紹介していきます。
病院勤務より給与は下がります
基本的に病院勤務時と比べて、介護業界へ転職すると給与は下がると考えていいでしょう。
30代の職員であれば、転職後に年収が100万円近く下がってしまうことも珍しくありません。
そのため給与の面からいうと、病院勤務から介護業界へ転職するメリットは少ないといえるでしょう。
介護施設によっては国家資格を持っていることで、別途手当が支給されることもありますが、介護施設の多くは経営難に陥っていることも考慮しておきましょう。
残業や夜勤は基本的にありません
デイケアセンターなど通所型の介護施設では、基本的に日中のリハビリ指導が終われば残業はありません。
また言語聴覚士が夜勤シフトに入ることも少ないので、終業時間は安定していると考えていいでしょう。
一方病院勤務で働く言語聴覚士は、日中のリハビリ指導が終わったあとから、医師とのミーティングや書類の整理など、連日残業が続くことも珍しくありません。
そのため勤務時間だけ見れば、病院勤務の言語聴覚士の方がハードといえるでしょう。
介護業界へ転職する言語聴覚士の人の中には、子育てなどで残業が難しくなった方も少なくはありません。
管理職への昇進はある?
介護施設の管理職へ就くためには、介護関連の資格を取得して、現場での介護業務に従事する必要があるでしょう。
言語聴覚士の仕事だけで、管理職などのステップアップは難しそうです。
また介護関連の資格を持っておけば転職の際にも有利になるので、介護業界へ転職するのであれば資格取得も検討しておきましょう。
介護業界へ転職して後悔する人も多い
介護業界へ転職する言語聴覚士の中には、転職したことを後悔する人も少なくありません。
給与など待遇面での違いだけでなく、職場での人間関係に悩みを抱える方も多いようです。
介護施設で働く職員の中には、介護関連の資格も持っていない人もおり、それぞれ介護に関する知識や経験もばらばらです。
そのため利用者への接し方や介護方針でのすれ違いが起きることも多く、人間関係のトラブルが原因で仕事を辞める人も少なくありません。
言語聴覚士として介護業界で働くのであれば、介護士の仕事や業界の環境を把握し、衝突することがないように配慮することが大切です。
今後は言語聴覚士の待遇改善も期待される
今後の介護業界ではQOLの向上と、増加する利用者への対応が求められています。
そんな中、利用者の言語能力や聴覚の機能を回復させ、自立した生活を取り戻すことができる言語聴覚士は重宝されていくでしょう。
介護保険制度の見直しなどで、今後言語聴覚士など国家資格を取得している人への待遇も改善されていくことが予想されます。
言語聴覚士になったら病院で働くしかないと考えている方は、介護業界への転職も検討してみるといいでしょう。