介護職において体位変換の仕事は基本中の基本です。
そのため介護業界へ転職するなら、体位に関する知識は必須条件。
そこでここでは、介護の仕事で最もよく見かける体位の1つ、オーソドックスな側臥位について説明しましょう。
※本ページにはPRが含まれます。
目次
側臥位とは?
側臥位とは一般に「横向き」などと呼ばれ、左右どちらか一方を下にした姿勢を言います。
ちなみに右を下にした姿勢を「右側臥位」、左を下であれば「左側臥位」と呼びます。
全体的には身体を横向きに「く」の字に曲げて安定を保ち、リラックスした姿勢を維持します。
また側臥位になると身体とベッド間に隙間が出来るため、クッション等を使用して隙間を埋め、身体を支える接地面をできるだけ大きくして安定化させることが大事です。
四枝が麻痺している方の場合、関節が拘縮していることがあるので、無理に側臥位などの体位変換をしてケガをさせないように注意が必要です。
通常、側臥位を必要とするシーンは、着衣着脱や排せつをはじめ、褥瘡予防の体位変換の際によく見られます。
特に身体の不自由な寝たきりの方の場合、ある特定の部分のみに体重がかかり、長時間そのままでいると皮膚が圧迫されて褥瘡の要因となります。
これを防ぐためには一定時間のインターバルで側臥位にし、安楽な姿勢にすることが重要です。
側臥位にする際のコツ
筋力が低下していたり、身体の四枝に麻痺がある人などは、側臥位の姿勢を保つことが困難です。
そのため背中にクッションをあててもたれかかるか、胸にクッションを抱えるようにして、安定した側臥位にする必要があります。
具体的に、背中側にもたれる場合には、肩から腰までの長さのクッションを背中にあてます。
この時にクッションを身体の下にやや差し込むと、全体的にクッションがズレないで安定します。
また胸にクッションを抱える場合は、胸を圧迫しないように注意が必要です。
さらに両足にクッションを挟むことで、脚の下くるぶしの褥瘡を予防することができます。
この際には、上側になる脚を前方に出して膝を曲げ、下側の脚とややずらしてから、上側の脚の下にクッションを敷くことがコツです。
側臥位を使って、独りで起き上がる際のコツ
身体の不自由な方が仰向けの姿勢である仰臥位の場合、独りで一気に起き上がるのは大変です。
そこで側臥位の姿勢を取り入れて、できるだけ負担を少なくして起き上がる方法があります。
これはあくまで介助なく独りで起き上がる方法なので、身体が不自由な方であっても、股関節と腰が自由に稼働する人が前提となります。
最初に仰向けの姿勢からやや側臥位になり、傾いた方の前腕部を床面につけます。
そして床面につけた方の腕に力を入れて、上体をゆっくりと持ち上げます。
この時には前腕部のみで自分の身体を支えるため、肩関節が正常に稼働しているか、脱臼等の恐れがないか確認しましょう。
さらには身体を支えるだけの腕力があることが前提となります。
次に床面につけたほうの手のひらで床面を押して、上体を90度まで起こします。
ここまでを慌てて一気にやろうとせずに、ゆっくりと確認しながら動作するのがコツです。
側臥位を使って、介助の必要な方を起き上がらせる際のコツ
身体の不自由な方には、独りで起き上がる力のない方もいます。
その際には介助人が側臥位の方法を使って、起き上がらせる必要があります。
ここでは身体の片側だけ不自由な方の、起き上がり介助について説明します。
ます、麻痺側の腕は胸の上に置いて、健側が下になるように側臥位になり、健側の前腕部をベッドに密着させます。
同時に、健側の脚を麻痺側の膝の下に入れます。
次に介助者は、利用者の頭に近い方の腕で利用者の肩甲骨をサポートし、もう一方の手で利用者の肘を支えて固定します。
そして肩甲骨をサポートしている腕を、肘をベッドにつけながらテコの原理を応用して持ち上げ、介助者側へ引き付けます。
最後に身体の不自由な方の肘に添えていた介助者の手をそのままスライドさせて、身体の不自由な方の動作を補います。
さらに上体が90度まで起き上がるように、肩甲骨をサポートした腕をさらに引き付けます。
側臥位などを使った介助の際に、基本的に抑えておくべきこと
介護職の現場では、様々な体位を使って介助するシーンが数多くあります。
そのうち側臥位も覚えるべき重要な体位の1つですが、どの体位を利用して介助しても、必ず基本的に抑えておくべきことがあります。
それは全ての動作を介助者が行うのではなく、できるだけ身体の不自由な方の残存機能を活用して、身体のメカニズムに沿った自然な動きを促すように介助するということです。
そのためには、予め対象者の身体状況を正確に把握し、どのような能力があるのか知っておくことが重要でしょう。
例えば起き上がりの動作には、片腕で身体を支えるだけの腕力および握力の有無や、正常に稼働する肩関節や肘関節。
さらには座位を保つだけの腹筋や背筋の力など、個々の対象者の身体機能をしっかりと把握しておくことが肝心です。
また単に形式的かつ機械的に介助するのではなく、常に身体の不自由な方に声かけをし、コミュニケーションをとりながら、残存する機能や能力を引き出すようにサポートすることが大切です。